Each Story 社員を知る

想いを理解し、
よりよい未来へ
案内していく。

武部 裕子

Yuko Takebe

流通営業部 所長 2009年入社

台東区にあった、築40年、3階建てのアパート。
秋の足音が聞こえる10月、武部のもとにそんな物件の売却依頼が舞い込んできた。
6人のご兄弟で所有しているアパートだが、全員がすでに70歳を超える高齢。
今後のことを考えて、資産を整理しておきたいという考えでのご依頼だった。
そのアパートは、6人が育った実家の跡地に建てたもの。
きっと、それぞれに特別な想いがあるに違いない。
果たして、全員に納得していただくことはできるのだろうか。
不動産の売却には、必ずその人の想いが深く深く根付いている。

自分の倍以上もの人生を歩んできたお客様

住友不動産販売が定期的に発信しているダイレクトメールに対しての反響から、武部は今回の依頼主である6人のご兄弟とのご縁をいただいた。アパートを売却する場合は、家賃収入の状況などを詳しくお伺いしなければ、査定金額を算出することはできない。まずは、6人の代表者だという次男様のもとにお伺いし、詳細を聞くことになった。所有者が6人もいるケースは珍しい。うまく話をまとめることができるかどうか…。入社以来、ずっと不動産売買に携わってきた武部でも、一抹の不安を感じながら営業センターを出発した。「今、5世帯が住んでいるのですが、だいたいどのくらいになりそうですかね」ちゃきちゃき系の江戸っ子。80歳を超えてもなお、元気そのもの。そんな第一印象の次男様だった。聞けば、家賃収入をすべて管理して、6人に割り振るという役割を担っているという。「やはりこの歳になってくると、6人のうちいつ誰がどうなるかも分からない。もし私に何かあったら、収入の管理が分かる者もいなくなるし。だから、全員が意思を持って話せるうちに整理をしたいと思ってね」事情をしっかりと聞き出せたところで、本題に入る。売却価格は約8,000万円からチャレンジしてはどうかというご提案をする。住友不動産販売のネットワークを使えば、広くお客様を探し出すことが可能。そんないつも通りの会話を繰り広げる。当然、一回の打ち合わせで商談はまとまらない。資産をお任せいただくために、いかに信頼していただけるか。お相手は、人生の大先輩だ。ただ、真っ直ぐに寄り添っていこう。そう決めた武部は、3ヶ月もの間、次男様のもとに通い詰めた。


誰もが同じ未来を想像しているわけではない

趣味の話、好きな食べ物、これまでの人生など、お会いする間に様々なお話を聞かせていただいた。お孫さんが来ていれば一緒に遊んだりもした。そうやって徐々に心を開いてくださった次男様に対して、武部は雑談をするタイミングで、今回の売却に関する最大のポイントを突くことにした。「このアパートのご売却は、やはり皆さんにもきちんとお伺いを立てなければいけませんね」「そうなんだよ。結局、私の一存だけでは決められないからね。じゃあ、次のタイミングで兄弟全員を集めるから、武部さん、そこで色々と説明をしてやってください」そして、本格的な寒さを迎える12月、ご兄弟に集まっていただくことになった。もちろん、他社での相見積もりを取られていることは予想されたが、そこまで言ってくださったのであれば、もう浮気はない。あとは、いい買主様に巡り合っていただくために全力を尽くすだけだ。そして、ご兄弟が集まる当日、意気揚々と次男様宅を訪れた武部はある異変に気づく。二人の欠席者が出たのだ。お一人は、体調不良とのことだったが、売却に依存はなし。しかし、もう一人の欠席者、B様は事情が違う。売却にはまるっきり反対。絶対に売りたくないという決意表明のために欠席をされたという。「不安が的中した」武部はそう思った。ご兄弟曰くB様は、少し頑固なところがあり、他人を簡単に信用することはない性格だという。自分たちでは説得させることは無理そうだから、武部に任せたいということだった。どうしたものか…。結局その日は、他のご兄弟から、売却に関して次男様を代表者にするという委任状に判を押していただいて、解散となった。

どんな形であれ、想いを受け止める覚悟

「大切な実家を売りたくはない。幸い6人ともまだまだ元気だから、売らずに持ち続けるべき」B様は、受話器の先でそう答えた。やはり、そう簡単には話は進まないし、どうしてもお会いいただけない。武部は手紙や電話で幾度となく連絡を取り続けるも、次第にB様とは、ほとんど連絡が取れなくなってしまった。そんなある日、武部のもとに悪い知らせが入った。ご長男が救急車で運ばれたという。まさに次男様が危惧していたことが起こってしまったのだ。幸い大事に至ることはなく、2週間ほどで退院をされたが、これをきっかけに「全員が元気なうちに、大切な資産を分配したい」という共通の意識がB様にも芽生え、売却活動をはじめることについては渋々ご納得いただくことができた。ようやくスタートラインに立てた時、実に1年以上の年月が経過していた。やはり人気の土地だけあって、購入希望の問い合わせは次々と入る。そのたびにご兄弟に集まっていただいていたのだが、B様はその場に来ていただけない。5人のご兄弟には納得をいただいた価格でも、「そんな価格では売りたくない」と言われてしまう。時には、厳しい言葉をいただくこともあった。それでも、めげるわけにはいかない。はじめはまったく電話に出てもいただけなかったB様が、会話をしてくださるようになったのだ。大切なご資産を預けていただけたのだ。決して信頼を損なうわけにはいかない。厳しい口調になるのは、それほど思い入れが強いということ。そこにどこまでも寄り添っていくのが、武部の流儀だ。そして、ようやくB様にもご納得いただける条件を提示してくれる買主様が現れたのは、売却活動がはじまって1年後のことだった。「今まで、さんざん文句を言って、ごめんなさいね。でも意地悪したかったわけじゃないの。大切な不動産だし、言われるがままっていうのがどうしても嫌で…。でも、武部さんが同じ女性だったから、言いたいことも言えたわ。結果、素晴らしい売却ができて、本当に感謝しています。ありがとう」引渡しのためにご兄弟6人揃って訪れた銀行で、武部はそう言ってくれたB様からブーケをいただいた。不動産の仲介営業は、お客様の人生をよりよいものに導いていく案内人だ。その想いにどこまでも寄り添い、深く理解することで必ず心は開けてくる。B様にいただいたブーケは、武部のこれからの人生の中で、成長の証として咲き誇り続けるだろう。

人と関わり、物事を進めていく

大学で所属していたサークルで、日本でも有数である文化祭の企画、演出、運営を担当し、精力的に活動を行ってきたことが自身の原点となる。そして、培ってきた対人折衝力を生かしたいという想いで、不動産流通業界を志望した。入社当時は女性が少なかったが、持ち前の推進力で契約をまとめ続け、現在は所長として活躍している。

女性活躍の先駆けとして

不動産仲介営業には女性ならではの視点が必要になることも多い。住友不動産販売では、女性が働きやすい環境も整っているため、これからますます女性の活躍が期待されている。そんな中、女性でも必ず成果を上げることができる証として成長を続け、ロールモデルとして、これからの未来を牽引していくためのスキルを磨き上げていく。