不動産コラム中古住宅に関することから、マクロ経済に至るまで、皆様のお役に立つ情報を経済的な観点でレポートします。
【Vol.3】 首都圏・中古住宅市場動向-H16.7-9月期

■7-9月GDPは減速感拭えず、中古住宅成約件数は伸び悩み
12日に内閣府から発表された国内総生産(GDP)速報によりますと、7-9月期・実質GDPは、前期(4-6月期)に比べて年率換算+0.3%のわずかな伸びにとどまりました。2%程度の成長率を見込んでいたマーケットの事前予想を下回り、6%を超えた前年度下期に比べて、減速感を拭えない結果となりました。なかでも、設備投資が▲0.9%と1年ぶりにマイナス、輸出が+1.5%と前期まで4・四半期続いた2ケタ増から大幅な鈍化を示し、これまでのわが国経済の牽引役を担っていた項目がブレーキを踏んだ格好になりました。一方、雇用情勢の改善が進んだことに加えまして、猛暑やアテネ五輪特需などから、消費は底堅く推移しました。ただ、個人所得はそれほど伸びておらず、中小企業は原材料の値上がりに苦慮する様子がうかがえるなど、個人もしくは中小企業の景況感は右肩下がりとなりました。 度重なる台風や大雨、地震などの天災も景気にネガティブな影響をもたらした可能性があります。こうしたマクロ環境のなかで、首都圏における中古住宅・成約件数は(東日本不動産流通機構「News Letter」から)、16年度7-9月期・総合計で前年の同じ期に比べて▲1.0%と減少を余儀なくされました。種別では、マンション+1.1%と堅調な伸びが続く一方、戸建は▲5.9%となりました。東京都心に近く、利便性に優れた中古マンションのニーズは依然として強く、戸建は、団塊ジュニアを中心とした若い方たち(若年層)が、環境面から郊外の戸建を購入されるケースが多いようです。ただ、郊外の戸建は、新興住宅メーカーによる新築分譲戸建と競合、若年層はこれらを選ぶ傾向が強く、中古戸建の成約件数に影響しました。

■中古住宅平均成約価格は下げ止まり基調で推移
平均成約価格につきましては(東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ」から)、16年度7-9月期のマンション・前年の同じ期に比べて+1.6%と上昇、戸建▲0.3%と下落を示しました。マンションは14年度から下げ止まり基調が続いていることに加えて、最近では東京都だけでなく、埼玉・千葉・神奈川の3県でも月次ベースでプラスになることが多くみられます。戸建は、マイナスとはいえ前年の同じ期に比べて横ばい、4-6月期はすでに上昇を示していることから、こちらも下げ止まる動きが続いているといえます。 これは、これまでの経済指標から、デフレ脱却の出口が見えてきたこと、地価データからは、発表の都度地価上昇ポイントが増え、不動産価格が本格的に底打ちするのでは、という認識が広まったこと、が背景にあると思われます。こうしたことから、中古住宅価格は当面底堅く推移し、もう少し先で景気回復がより鮮明になった場合、改めて上昇トレンドに向かうのではと予想しております。なお、GDPデータからは、デフレータの下落幅が4-6月期2.7%から7-9月期2.1%に縮小しました。デフレ脱却に向けたサインであるとともに、今後より注目される指標になる可能性があります。

図表:実質GDP-前期比(年換算率)・需要項目別寄与度


図表:首都圏・中古住宅の成約件数(前年同期比)


図表:首都圏・中古住宅の平均成約価格(前年同期比)


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