Vol.68 升毅さん

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インタビュー 私のいえ ∼すまいの履歴書∼ 各界でご活躍の方々に、家、住まいに、住み替えにまつわるお話をうかがいました。 インタビュー 私のいえ ∼すまいの履歴書∼

Vol.68 2024/07/08更新

「キッチン」が、家を選ぶ基準かもしれません 趣味の料理でコミュニティも広がりました

「キッチン」が、家を選ぶ基準かもしれません 趣味の料理でコミュニティも広がりました 升毅さん

profile
升毅(ます・たけし)
1955年生まれ、東京都出身。初舞台は76年「ロンググッドバイ」。91年に劇団「MOTHER」を立ち上げ人気を博す。主な出演作品にNHK連続テレビ小説「あさが来た」、「ブギウギ」、連続ドラマ「旧車探して、地元めし」。映画『八重子のハミング』など多数。趣味は料理。

幼少の頃は、親の転勤で東京と大阪を行ったり来たりだったという升毅さん。引っ越しが多く、家はずっと賃貸だったそうです。ご自身も家を持つことにはこだわりませんが、住む場所への愛着や、コミュニティへの思い入れを強くお持ちです。趣味の料理を始め、居心地の良い場所に住むことの大切さについて伺いました。

団地のコミュニティでのびのび暮らした幼少期。
自分のキッチンを持つことが自立のきっかけに

升毅さんの写真1
自分だけのキッチンを求めて一人くらしを始めた升毅さん

父の仕事の都合で転勤族でしたから、幼少期は東京と大阪を行ったり来たりしていました。生まれは東京で幼稚園の頃は祖師谷の団地に住んでいて、同じ団地に住む友達と何人かで一緒に登園し、帰ってきてからもそのままみんなで遊ぶ、という暮らしでした。でも、卒園と同時に大阪に引っ越したんです。大阪の千里に2年ほど暮らして、小学校2年生の時にまた東京へ戻り、小学校卒業まで住んだのが西東京市のひばりが丘団地。子どもの頃は、団地のコミュニティでのびのび暮らしていました。同じ棟に友達がいて、家の間取りも同じだし、生活環境が同じことから生まれる連帯感や安心感みたいなものがあったような気がします。中学生からは、また大阪。千里ニュータウンの公団住宅に家族4人で入居し、それ以来、実家はずっとそこでした。千里は街が整備されていて緑が多く、とても住みやすかったですね。
中学生からは自分の部屋をもらっていましたが、何か飲みたくなったり食べたくなったりした時に、家族がいるリビングで冷蔵庫を開け閉めするのが、すごくイヤで(笑)。しょっちゅう行き来していると「ちゃんと勉強はしているのか?」とうるさく言われますし。だから、コーヒー、砂糖、お湯を入れたポットを自分専用にセットして自室に持ち込み、好きな時に一息つけるようにしていました。小学校の低学年くらいから、母の手伝いでおせち料理の松前漬けなんかを作っていたので、包丁も使えたんですよ。そんな経験から料理が好きになったのかなぁ。母が留守の時は、キッチンを自由に使って料理できるのがうれしかったですね。大学生になると自分専用のキッチンが欲しくなって、大学3年で一人暮らしを始めました。当時、交際していた彼女が住んでいた、岸和田に近い物件を自分で探したんです。劇団の養成所で知り合った奥さんのことですけどね(笑)。まだ学生だったし、アルバイトでギリギリ払えそうな、古い1Kです。各停しか停まらない駅から10分くらいの立地でした。それでも、とうとう憧れの自分専用キッチンです。ゼロから自分用に整えていくのが、もう楽しくて。調味料をどこに置こうか、食器はどれくらいそろえようかと準備していると、「自分の城が完成する」という気分になりました。

大阪の下町で初めての一人暮らしを経験 郊外の暮らしが恋しくなり、ニュータウンの団地に入居

升毅さんの写真2
街並みやコミュニティを大切にしたいと語る升毅さん

駅前に大きなスーパーがあって、調味料や食器などを一通りそろえました。劇団の後輩を呼んで冷やし中華をふるまってから、みんなで近所のプールで泳いだことをよく覚えています。その1Kに1〜2年住んでから、実家のある千里の近くに引っ越しました。下町の生活も良かったんですが、道路が整備されていて自然が豊富で、という郊外のニュータウンに戻りたくなったんです。良さそうな部屋が見つかり、劇団の後輩と共同生活をすることになりました。2人で住むので、小さめの2DK。きれい好きな後輩だったので、暮らしやすかったですね。僕が料理担当で、彼が掃除と片付けをしてくれる。いい組み合わせだったと思います。
そのうち彼が別の物件に引っ越すことになり、偶然、実家の団地に空きが出て、たまたま同じ棟に入居できることになったんです。公団だから家賃はそれほど高くないし、すぐ近くに両親がいるという好条件で再び一人暮らしを始めました。大学を卒業して劇団員をやっていた23歳ころです。ニュータウンの中では新しい建物で、広めの3DK。その後、つき合っていた彼女と結婚して、そのままそこで新婚生活をスタートしました。奥さんも「そこでええやん!」と言ってくれたので(笑)。ダイニングキッチンとリビングの他に、6畳と4畳半の部屋があって、2人で暮らすには十分でした。
2人ともアルバイトをしながら劇団活動をしていたので、料理をするのは休みの日ぐらいでしたけど、奥さんが料理上手だったので、2人でいろいろと料理を作り合ったりしましたね。週に1、2回は実家でご飯を食べることもあったかな。実家が近い恩恵にあずかりました(笑)。
結婚して3年経った頃に長女が生まれて、同じニュータウンの2つ先の駅にある団地に引っ越しました。千里ニュータウンって広いんですよ。開放感のある場所で気に入っていたし、公園もあって子育てするには良い環境だったので、千里を離れたくなかったんです。少し小さめの3DKになりましたが、それ以来、ずっとそこに住んでいます。今は、僕が東京に単身赴任しているし、子どもたちも家を出ているので、普段は奥さんが1人で住んでいます。

単身で東京のマンション暮らしを開始
居酒屋のような居心地の部屋に仲間が集まる

升毅さんの写真3
腕に自信のある料理とお酒で仲間をもてなす「居酒屋ますや」を始めた升毅さん

40歳を目前に控えた年に、阪神淡路大震災が起きました。直後に控えていた劇団公演はどうなるかわからないし、レギュラーの仕事もなくなったりして、気持ちの動揺も仕事へのダメージもあった。そこへ、東京から仕事の話を立て続けに2ついただいて、これはしっかりと地に足をつけて、東京で勝負しようという覚悟で上京することにしました。
大阪に家族を置いて、1人で東京へ出るので、予算的に負担にならない部屋を探しました。親身になってくれる不動産屋さんに案内してもらったのが、目黒区にあるワンルーム。小さなキッチンには2口の電気コンロと、その下にコンパクトな冷蔵庫が付いていました。「ここじゃ、料理が…」と思ったものの、建物の向かいはスーパーだったんです! これが決め手となりました。
卓上コンロを駆使して、料理もさほど不自由なくできましたし、閑静な住宅街で居心地がよく、8年ほど住んだ頃に、長女が東京の大学に進学することになりました。一緒に住みたいというので、同じ街の2DKに引っ越しました。以来、今も同じところに住んでいます。住み始めた頃、隣に住む外国籍の方が、よく友人たちとホームパーティーをしていたのが楽しそうでした。そのお隣が引っ越したので、次に変な人が来たら嫌だなと思い、隣も借りちゃいました(笑)。街がとても気に入っていたし、地元の仲間もたくさんできて、ここから離れる気もなかったので。それに、娘を気にせず仲間を呼んで、お隣がやっていたホームパーティーみたいなことができますしね。
実は僕、いつか居酒屋の親父になりたいとずっと思っていたんです。「隣の2DKを使えば、俳優業を続けながら居酒屋ごっこができるぞ!」とひらめいて『居酒屋ますや』と称した家呑みを始めました。不定期で月に1回くらい、仲間を呼んでお酒とおつまみをふるまう会です。回を重ねるうちに、ビールサーバーが入り、炭酸水メーカーも置くようになり、お酒専用の冷蔵庫も用意して…と、居酒屋としてはかなり充実してきました。家具をこうしたいという気持ちは全くないのですが、キッチン周りだけはこだわってしまいます。
料理を提供する動線を工夫して、できたらすぐに「これ持って行って」と手渡せるようにしたり、どんどん使いやすくなっていますね。
今の家も、大阪の家もずっと賃貸ですが、実家がそうだったので家を買おうという気持ちはないんですよね。こんな家に住みたいというよりは、住む街やコミュニティが大事なのかもしれません。千里は便利でゆったりしていて、子育てにはとても良い環境だったし、今住んでいる街は都会だけれど落ち着いていて、たくさんの仲間とのコミュニティができている。そのときどきの自分にとって居心地のよい場所が、僕にとって“住みたい家”になるんだと思います。

こぼれ話

自分のキッチンが欲しいがために一人暮らしを始め「将来は居酒屋の親父に!」というほど、料理好きの升さん。
今は、役者仲間や地域の方を手料理でもてなすために、隣の部屋も借りてしまい、キッチンも着々と充実。ビールサーバーなどなど、本格的な装置もそろいました。

INFORMATION

『俳優・升毅の 家呑みおつまみ、一丁あがり』

升毅さん考案の簡単おつまみレシピ集を見つけました。
美味しいものをつまみながら「家呑み」を楽しみたい人のための5分ほどでできる簡単な酒肴から、しっかりしたおかずにもなるものまで、肉豆腐、いか大根などの小料理、ラタトゥイユやメキシカン風サラダなど野菜たっぷりの一品、鮭ちゃんちゃん焼き、スペアリブなどガツンとしたメイン、焼きそばや和風チヂミなどのシメなど――冷蔵庫にある食材といつもの調味料でパパッと手軽にできる68品が紹介されています。

著者:升毅
定価:1815円(税込)

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