地価ニュース

特集・上昇強まる地価の最新動向

◎地方4市、コロナ前の高い上昇率が復活
周辺市町への波及効果、住・商とも強く

　23年地価公示では、地方圏の全用途平均・住宅地・商業地が2年連続で上昇し、上昇率も拡大した。なかでも地方4市（札幌・仙台・広島・福岡）は、全用途平均・住宅地・商業地の全てが10年連続でプラスを維持。コロナ前に顕著だった高い上昇率が復活した。周辺市町の上昇も牽引している。
　地方4市の全用途平均は＋8.5％（前年＋5.8％）で、コロナ直前の20年の＋7.4％を上回った。住宅地も＋8.6％（＋5.8％）の上昇で20年の＋5.9％を超えた。商業地のみ＋8.1％（＋5.7％）で20年の＋11.3％には及ばなかったが、再開発の進展、人流回復を背景に高い上昇を示した。
　住宅地で最も地価上昇率が高かったのは札幌市。中央区など住環境や利便性が良いエリアの土地需要は旺盛で、中心部に比べ割安感がある市外縁部にも戸建て住宅需要が広がった。札幌市内での地価上昇と宅地の供給不足により、周辺市の地価も上昇が顕著になっている。隣接する江別市の住宅地は＋27.5％と大幅に上昇。江別駅から2.3㎞の地点「江別－2」は＋29.1％で全国の住宅地の上昇率5位。札幌駅へのアクセスの良さで需要が高まっている。同じく隣接する北広島市の住宅地は、札幌市からの住宅需要の広がりに加え、北海道ボールパークＦビレッジ事業への期待感もあり、相乗効果で＋26.2％もの上昇となった。
　商業地は福岡市の上昇率がトップ。中央区天神地区では大規模再開発「天神ビッグバン」が進展し、博多駅周辺のオフィス需要も高まっている。さらにマンション用地の需要も強く、地価上昇が継続した。福岡市周辺の市町も、波及効果で駅周辺のマンション用地需要が旺盛となっているほか、幹線道路沿いで店舗・事務所需要があり地価は上昇。筑紫野市がその代表で、商業地は＋10.0％だった。
　高い地価上昇がみられた地方4市だが、一部でまだ下落が続く地点もある。仙台市を代表する繁華街、青葉区国分町の「仙台青葉5－16」「仙台青葉5－17」は、順に△0.9％（前年△5.0％）、△1.0％（△5.4％）。人流が回復せず、出店意欲の減退が続き地価もマイナスを脱していない。
　地方圏は、地方4市以外の「その他の地域」でも地価の回復が鮮明になった。地方圏のその他の地域の住宅地は＋0.4％（△0.1％）で、28年ぶりに上昇に転じた。地方圏その他の地域の住宅地は、長らくマイナスが続いていたが、11年以降は下落幅が縮小し、20年には横ばいまで戻していた。コロナ禍で21年からマイナスになったが、緩やかな地価の回復傾向は継続した。国土交通省は28年ぶり上昇の要因には、「県レベルではマイナスになっているものの、県庁所在地ではプラスになっている地域がある。このような地域が徐々に広がってきた」という背景もあると分析している。

（提供：日刊不動産経済通信）