地価ニュース

特集・上昇広がる地価の最新動向④

◎福岡都市圏、マンションの値上がり顕著に

―上昇は周辺に拡大、実需の反響やや鈍る―

　5年近く前に販売が始まり、福岡都市圏のプライスリーダーといわれた新築分譲マンションは、当時坪400万円ほどだった。その物件が中古マンションとして取引された最近の事例に、坪500万円台の成約があったという。上層階では、同じ物件に坪1000万円の強気の売り出し価格もみられる。新築マンションでも23年末に発売した積水ハウスの天神エリアの物件で、第1期は平均坪単価が500万円超、最高額住戸が6億円（専有面積200㎡）だった。福岡都市圏では今、中心部から利便性の高い周縁部まで範囲を広げながら、住宅価格は顕著な上昇が続いている。

　24年の地価公示によると、福岡市の住宅地は9.6％上昇（前年は8.0％上昇）、商業地は12.6％上昇（10.6％上昇）と前年より上昇幅を拡大した。国土交通省も福岡の事業者からも「『天神ビッグバン』と『博多コネクティッド』という再開発促進の2つの事業が、地価の上昇を強く牽引した」という見解で一致する。九州の新築マンションの価格情報に精通する住宅流通新報社編集部長の坂本康行氏は「新築物件で天神から1.5km圏内だと、数年で坪当たり100万円の上昇、それより外では10年ほど前に比べると2倍以上に上昇したエリアが珍しくない」と急上昇の実態を語る。東急リバブル福岡支店長の緒方太郎氏は「実需で築10年の中古マンションは、坪200万円台前半から坪300万円の物件にニーズがある」とする一方で、「経営者やライセンサーが高額物件を購入する。インバウンドもこの1年で増えた」と話す。西鉄不動産取締役仲介事業部長の木寺利宗氏は、「23年秋から反響は若干弱含む傾向になったが、天神や薬院、西新を始め人気の高いアドレスは需要が引き続き強く、希少性ある物件は中古でも坪500万円も珍しくない。郊外も中心部まで1時間圏内の駅近物件などは好調だ」とする。また、西鉄を中心にバスが整備された都市という側面があり、緒方氏は「3000万円台など値頃感のあるバス便の戸建ては人気だ」とした。

　再開発事業の進展は、今後は天神エリアから博多駅周辺に移っていく。福岡都市圏の動向としてみると、新築マンションの供給が価格を引き上げながら展開エリアを広げて、中古マンションにもその上昇が波及するという見通しが強い。一方で、木寺氏は「郊外などで実需が付いてきていないエリアもある」として、堅調な市況が続く中心部での仕入れを強化する。緒方氏は「マンションの価格はさらに上昇する」とみており、「デベロッパーは用地仕入れに苦労しているが、シンボリックな物件は富裕層の買い手がいる」と語る。坂本氏は「『ららぽーと福岡』が開業した影響で住宅ニーズの弱かった博多駅東側のエリアも人気が上がり、価格上昇への期待感も高い」と分析する。

◎熊本大津33.2％上昇で全国最高を記録

　熊本県の合志市、大津町、菊陽町では、大手半導体メーカーの進出により、全国で最高となる大津5―1の33.2％上昇（16.8％上昇）を始め、地価が大幅に上昇した。この3市町についてＬＩＦＵＬＬでＬＩＦＵＬＬ ＨＯＭＥ'Ｓ総研副所長を務める中山登志朗氏は「現地をみると、道路を始めインフラが整っておらず周辺の生活利便施設も少ないため、海外から来る技術者は熊本市に住む場合も多そうだ」と予測する。周辺にある中古戸建ての価格に大きな上昇はみられていないが、賃貸マンションの用地需要や、熊本市内に投資需要もみられるという。今後の計画の進展に伴って資金が集まり、行政と連携してインフラとともに都市の発展も期待できるエリアとなりそうだ。

（提供：日刊不動産経済通信）