地価ニュース

特集・上昇広がる地価の最新動向⑤

◎東京の高級注文住宅を求める海外富裕層

―都心回帰で国内客の引き合いも堅調に―

　大手ハウスメーカーの東京都心の高級戸建て注文住宅事業は円安を背景に海外からの引き合いが強まった。アフターコロナの都心回帰で東京都心に立地する戸建て住宅の需要が高まっており、国内客からの引き合いも手堅い。1棟単価は上昇は続き、平均坪単価は200万円ほどに達した。総額5億円以上の超高級注文住宅の販売は海外勢の需要が牽引している。

　海外顧客の動向について三井ホームの濱田哲也・東京支店レジデンス営業室長は「円安環境下でシンガポールなどの海外富裕層の顧客が増えた」と話す。好まれる立地は「ある程度英語が通じてすぐに遊びに行ける場所」とし、渋谷区の明治神宮前・表参道エリアと港区の南青山エリアなどを挙げる。加えて「日本にはラグジュアリーホテルが少ないため代わりに不動産を購入しようという傾向があり、高級戸建て注文住宅も候補のひとつになっている」とみる。同社は現在のところ海外富裕層向けの営業体制はないが、将来は海外客を念頭にした土地の仕入れやプロモーション体制の確立と通訳の確保が必要になるとみる。

　大和ハウス工業が専属の「ＺＩＺＡＩデザイン室」を立ち上げて21年4月に販売を始めたＲＣ・木造混構造の超高級戸建て注文住宅「Ｗｏｏｄ　Ｒｅｓｉｄｅｎｃｅ　ＭＡＲＥ―希―（マレ）」では、請負金額5億円以上の物件の施主の半数強を中国や香港、台湾などのアジア系の富裕層が占める。購入目的は投資と実需が半々だ。発売時は5年で60棟を売る目標を立てていたが3年で達成した。平均坪単価は200万円台。総受注棟数の3分の2は関東の物件で、うち約7割が東京都心だ。東京都心以外の立地では別荘・セカンドハウス用途が多い。

◎5億円以上の「超高級」物件の受注増加

　国内では都心回帰が進んでいる。三井ホームの濱田氏は「コロナの渦中は都心から1時間程度の立地にセカンドハウスとして戸建てを建てるニーズが多かったが、今は都心の建設地が求められている」と話す。ほぼすべての顧客が国内客の三菱地所ホームでは、平均価格2億円前後の最高級モデル「オーダーグラン」を世田谷区を中心とする東京都内で年間20棟弱を受注している。国内富裕層の手堅い引き合いを背景に、事業拡大を図るため4月に専属スタッフを集約した「オーダーグラン設計建設部」を立ち上げた。積水ハウスの23年度の東京都内の戸建て注文住宅の平均価格は6711万円。この2年間で800万円ほど上昇した。都内の5000万円以上となる価格帯の物件が受注棟数の67％を占める。22年度と比べる11.1ポイント増加した。黒小暁彦・東京営業本部販売促進部長は「5億円以上の超高級物件の受注が増え、平均価格を押し上げた」としている。

　24年の地価公示によると、東京23区全体の地価変動率（住宅地）は＋5.4％（前年＋3.4％）と上昇率が拡大した。そのうち渋谷区が＋7.0％（＋3.8％）、港区が＋7.2％（＋3.6％）、世田谷区が＋4.0％（＋2.3％）など富裕層から関心が強いエリアは住宅需要が堅調で、特に上昇幅が大きい。都心や隣接する区において、生活利便性が高い地域では特に引き合いが活発になっている。

（提供：日刊不動産経済通信）